漫画アシ問題で注目された「労働者性」って?人事の代わりにググりました。

ちょっと前に、漫画家アシスタントの労働問題(?)が大きな話題になっていましたね。


■週休3日、残業禁止、「作画完全外注」――漫画家・三田紀房が「ドラゴン桜2」で挑む働き方改革 Yahoo japan ニュース

■三田紀房先生に残業代を請求したことについて マンガアシスタントについてのブログ

■そもそもなぜアシスタントは低賃金・長時間労働なのか マンガアシスタントについてのブログ

■「三田紀房先生に残業代を請求したことについて」というブログを読んで感じたこと note 佐藤秀峰

■カクイシさんに反論をいただきました note 佐藤秀峰


簡単に要約すると「ドラゴン桜」で有名な漫画家の三田先生が「マンガ業界はブラックな職場だけど、うちは完全にホワイト」と冒頭のインタビュー記事で語ったところ、元三田先生のアシスタントのカクイシさんが「そこで書かれているほどホワイトではなかったし、残業代もらっていなかったので請求します」とブログをアップ。その話題に漫画家として新しい試みを様々、取り組まれている「ブラックジャックによろしく」の佐藤先生がコメントをして、様々な議論に波及しています。


その中で、私たちの界隈として関係ありそうなのは「雇用契約」と「業務委託契約」そしてそれを判断する「労働者性」とはという話題です。


漫画業界の慣例的には漫画家とアシスタントの関係はいわゆる業務委託契約で、そのため労働基準法の適用も受けないので長時間労働も残業代が発生しないことも問題なく、また社会保険なども関係ないという状態になっているようです。


業務委託契約というのは、簡単に言うとお金を払って何かの仕事をやってもらう契約のことです。雇用するわけではないので、もろもろの雇用関係の法令の適用対象にはなりません。私たちが扱う求人メディアなどでも、募集する雇用形態(雇用するわけではないのですが)として「業務委託」を選べるものも少なくありません。その場合は、雇用ではないので「男女雇用機会均等法」の適用も受けないので片方の性だけを応募することができます。


また業務委託契約という話題で思い出されるのは、ゼンショーのヤツですね。Wikipediaから引用すると。


勤務形態に関する問題
ゼンショーグループでは、本社採用の新卒者のほかに、本部並びに各店舗ブランドごとに『アルバイト』として、時間給のシフト勤務労働者を一括して募集している。店舗に勤務する正社員は、基本的に店舗管理マネジャー(いわゆる「店長」)のみで、実質的には『アルバイト』による店員(「クルー」と呼ばれる)が店舗運営を担っていると思われるが、「すき家」では店長と複数店舗担当者は正社員ではなく契約社員の場合もある[23]。
この『アルバイト』の勤務形態について、ゼンショーでは労働問題調停(後述)の場において「『アルバイト』と称する者らの業務実態を精査した結果、『アルバイト』の業務遂行状況は、およそ労働契約と評価することはできない」「会社とアルバイトとの関係は、労働契約関係ではなく、請負契約に類似する業務委託契約である」と主張しており[24]、すなわち『アルバイト』は、ゼンショーとの雇用関係にない個人事業主としての個人請負契約であることを表明している。


この件です。


と、こんな風に書くと、じゃどう考えても業務委託契約の方が有利!雇用はやめて業務委託契約に切り替えれば残業代も払わなくていいし、社会保険も負担しなくていい、となりそうですが、もちろんそんなことはありません。


それこそは冒頭の漫画アシスタントの議論でも指摘されていた「労働者性」。つまり仮に業務委託契約だったとしても、実態上、労働者としか思えなかったら、つまり「労働者性」があった場合には雇用関係とみなされ、労働基準法他、関連法案の適用対象となるわけです。


じゃ、それどうやって判断するのというところで、ガイドラインとなるのが以下の文章です。


厚生労働省 労働基準法研究会 報告 労働基準法の「労働者」の判断基準について

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000xgbw-att/2r9852000000xgi8.pdf


タイトルそのまんまですが、労働基準法上の「労働者」となる判断基準について示されば文書です。具体的には「使用従属性」に関する判断基準と「労働者性」の判断を補強する要素。読んでみると意外にわかりやすいので、詳細は一読していただくとして、一部の項目を下記に抜粋してざっくり要約します。


・仕事の依頼を断れるかどうか

 →断れる自由がある場合は、労務を提供しているとは言えない。逆なら「労働者性」が強まる。

・勤務場所や勤務時間が指定されているかどうか

 →勤務時間や場所が指定されている場合は、指揮監督関係の基本的な要素なので、「労働者性」は強まる。


・「賃金」っぽいかどうか

例えば、働いている時間によって報酬が変化したり、休んだら減ったり、長く働いたら多少割増がついたりのような賃金っぽい体系になっていた場合、「労働者性」は強まる。


・高価な機械や器具を自ら持ち込んでるかどうか

働く側が例えば高価な建設機械などを有し、それを使って仕事をしている場合は「事業者」っぽいので、「労働者性」は弱まる。


・専属かどうか

特定の企業の仕事だけをしていて、時間的な都合で他の仕事をすることが無理だったり、経済的に従属している場合は、「労働者性」は強まる。


なので、漫画家のアシスタントなら誰もが雇用契約というわけではなくて、実態によるということですね。週5、6日で朝から晩まで、特定の職場でアシスタント業務をやっていれば、それは雇用契約の可能性が高いですし、在宅のアシスタントさんに特定のカットを単発で1カットいくらといった体系でお願いした場合は雇用契約とは言えないといったところでしょうか。


漫画業界のように慣例的に業務委託契約ということで、労働基準法の適用外だと思っていても実態からみれば「労働者性」があった場合、当然、労働基準法などの適用対象となるので、遡及的に残業代を請求したりということも可能になります。


そういったリスクを確認する意味でも、自社で業務委託的なことをやっている場合は実態を確認したほうがいいのかもしれません。


似たような話で最近、少し怖いなぁと思うのは新卒のインターンで、その一貫としてテレアポさせているパターン。いくつかもらった営業電話で逆に聞いてみると、時給が発生しているところと、そうでない場合があって、これも実態的は雇用関係とみなされる気がします。